あなたの絶版書籍は電子書籍化できるか?
3.1 権利譲渡型契約
3.2 出版依頼型契約
4.1 出版契約類型の判定
4.2 紙の「本」以外の媒体に対する制約の判定
a. 著者に支払われた対価から
b. 契約当時の同一出版契約類型の事例から
c. 両当事者の事後の行動から
d. 著作物の性質などから
7.1 最も穏当な働きかけ:再契約
7.2 契約関係の解消
a. 独占と非独占
b. 許諾の範囲(地域、期間、言語)
c. 対象メディアの特定
d. 訂正権
e. 対価(何の何%か、固定か変動か)
f. 報告・監査
私たち絶版堂は、著者の利益を最大化させるため「適法に絶版書籍を電子書籍化すること」に対して真剣に取り組み、出版契約や著作権について分析と熟考を重ねてまいりました。なぜなら、絶版書籍の電子書籍化がかなえば、数多くの著者が読者との新たな接点を獲得できるからです。私たちはそのお手伝いをしていきたいと考えています。私たちの分析と熟考の成果として、ここに、弊社が絶版書籍の著者様に提案する電子書籍化のノウハウを公開することにしました。
「いったん出版社から本を出したら、絶版になっても自由な電子書籍化はできない」、「出版社の気が変わって電子書籍を作ってくれるのを待つしかない」、そう思っている方は多いのではないでしょうか。もちろん、著者と出版社の契約により、他社からの電子書籍の刊行が禁止されている場合はあります。でも、すべてがそうではありません。出版契約の条件さえクリアできれば、著者自身の手によって著者自身のHPで、あるいは、弊社のような電子出版社を通じて、電子書籍として販売することが可能になるのです。
ところで、「絶版」とはどのような状態を指すのでしょう。まず、この点について簡単に説明しておきます。
本来の絶版は、「出版権が消滅したために同じ原版で刷ることはできず、版が絶えた」という意味でしたが、それが転じて「再び印刷をするつもりがない状態」“をも”指す言葉になりました。つまり、絶版には「出版依頼型契約が終了した場合」と「出版依頼型契約が存続しているものの出版社が出版しない場合」という二つの場合があるわけです(「出版依頼型契約」という言葉は、今は単に「出版契約」と捉えてください。詳しくは後述します。また、著作権法上に「絶版」という用語はありません。それに相当する用語は「出版権の消滅」で、これは「出版権」についてのみの用語法です。この点についても、詳しくは後述します。)。
絶版=出版依頼型契約の終了 or 出版社が出版しないだけで契約関係は存続
このような用語法の混乱と相まって、「出版権を存続させたままで出版しない」、「電子書籍の出版ができるかどうかわからない」などという曖昧な状態が続いているわけです。
まずは、出版契約書を確認してください。契約期間が切れていませんか? もし切れていれば、出版権等によって制約されていた著者の著作権は元に戻っており、著者は自由に出版・電子書籍化を行えます。弊社も迅速に電子書籍化をお手伝いできます。「契約書はあったけれど期間が切れているか判断できない」という方も弊社にご相談ください。
「契約書が見つからない」、「契約書の解釈がよくわからない」という方、このブログエントリはそんな方のために用意しました。以下で対処法をじっくり説明していきます。
絶版書籍を電子書籍化する流れは、下図のようになります。出版契約は、出版社によって、また契約締結時期によって大きく異なります。さらに、著者との力関係や権利主張の具合によっても変わります。著者がどのような契約を結んでいるのかは、契約書を見ないとわかりません。

簡単には理解できない図ですね。聞き慣れない言葉もたくさん出てきています。これらについて、次節以降できちんとご説明いたします。
結んだ契約は守らなければなりません。そして、たとえ著者本人であっても、「もう書店で売っていないので、他社から電子書籍を出しますね」と勝手に宣言できるほど、出版契約は単純ではありません。絶版書籍を電子書籍化するためには、何はともあれ出版社と結んだ契約の内容を把握する必要があります。そこで、まず出版契約類型について概要を説明します。
出版契約の類型は、次のように分かれます。このうちのどのタイプの契約を結んでいるかによって、電子書籍化がどの程度容易に行えるかが決まります。

著者が権利を出版社に譲渡した場合を指します(→参考【付録D】)。著者が作品を執筆したとき、著者が著作権という権利を持ちます(→参考【付録E】)。これを譲渡(=売る、タダであげる、など)してしまえば、他人にモノを売った場合と同じように、もはやそれについて口出しはできません。
これらの場合、どうしても電子書籍にしたければ、現在権利を持っている出版社等に交渉して「著作権等を買い戻す」必要があります。
もっとも、この類型の契約は、雑誌中の記事、本の挿絵などで使われているものの、書籍の執筆においては一般的ではありません。また、自費出版の場合も、この類型はあまり使われません。したがって、このブログエントリでは、この類型には深く触れず、次の出版依頼型契約を主に取り扱います。
著作権はもちろん、複製権等の部分的な権利も一切譲渡せず、単に出版を依頼した場合を指します。
1)独占許諾型:独占といっても、著者と出版社の二者間の契約にすぎない契約類型です。つまり、契約当事者でない者には、独占許諾であることを主張できません。具体的には、著者と契約を結んだ出版社Aは、著者が他の出版社Bから出版しても、著者に対して損害賠償の請求ができるだけで、出版社Bに対しては損害賠償請求も出版差止め請求もできません。
2)出版権設定契約:著者が他の出版社Bから出版したら、著者のみならず他の出版社Bに対しても文句を言える類型(著作権法第3章に定める「出版権」を、著者が出版社に設定する契約類型)です。多くの条項は独占許諾型と同様ですが、法律で特に定められている事柄があります(詳しくは後述します。)。
出版契約類型については、おおよそご理解いただけましたか? では、あなたが出版社と結んだ契約がどれに当たるのかは、具体的にどのようにして判断するとよいのでしょう。また、上の図「絶版書籍の出版契約確認の流れ」にあった、電子書籍に対する契約上の縛りについても、もう少し詳しく知る必要があります。次節では、そのあたりを説明します。
この節では、出版依頼型契約について電子書籍化の可否を判定する手順を、具体的に説明します。まず最終的な「答え」を以下に示し、続いて具体的な確認手順を説明します。

権利譲渡型契約なのか出版依頼型契約なのか、出版依頼型契約なら、非独占型なのか独占型(独占許諾型・出版権設定契約型)なのか。それらは、著者と出版社の合意を証拠化した文書である「契約書」の、「著作権譲渡」「出版許諾」「出版権設定」等を定める条項によって判断されます。下図をご覧ください。

多くの契約書において、どの契約類型かの判定は、ひとまず以上のチェックで足りるでしょう。「権利譲渡型契約」なら権利を買い戻すという困難を覚悟しなければなりませんが、「非独占型の出版依頼型契約」ならばすんなりと電子書籍化できるでしょう。また、「独占型の出版依頼型契約」ならば、後述するアクションを起こせば、電子書籍化できる可能性が広がるでしょう。
ただし、「おや? 意外に自分の権利が強いかな?」と思った場合でも、「よし、自分で電子書籍化はOK!」と即断しないでください。それ以外の条項(特に、「定義」の箇所や前文等)をチェックしてみてください。ひょっとしたら、違う場所で厳しい制約がかけられているかもしれません。また、このブログエントリの5節「契約書がない場合の契約類型の判定」も参考にしてください。
出版契約類型以外に、その契約が紙の本についての出版契約に留まるのか、それとも電子書籍の出版にまで及ぶのかという点も重要なポイントです。
著作物に対する全ての財産的権利を譲渡している場合はもちろん、複製権を譲渡している場合にも、現在の権利者と交渉してこれを取り戻さない限り、つまり、現在の権利者から権利を買い戻さない限り、著者自身の手による電子書籍化は不可能です。少なくとも、電子書籍化の前提となる複製権が必要です。
非独占型である場合には、他の出版社や著者自身による電子書籍化が許されていますので、問題はありません。
問題なのは、独占型契約の「独占許諾型」と「出版権設定契約型」の場合です。これらの場合には、紙の本についてのみ許諾したのか、「電子書籍」まで許諾したのかが問題になってきます。
紙の本のみならず電子書籍についても独占型契約を結んだのですから、契約先の出版社でしか電子書籍化をすることはできません。残念ながら、著者自身の手による電子書籍化や、著者のHPでの公開・販売は困難でしょう。
本当に紙の本のみの契約を結んでいたのかが問題になります。電子書籍出版、つまり、紙媒体を用いずCD-ROMやネットショップを経由して販売する方法も、紙の本の出版に含める前提で契約をしたのではないか、という点が問題となります。
紙の本の電子書籍化は、パソコンの発達とともに現実性を帯び始め、Apple社のiPhoneやAmazon社のKindleの登場とともに広く世の中に知れ渡りました。また、平成9年(1997年)の著作権法改正によって、著作権法上でも広く認知されることになりました。こうして、著者にとっても出版社にとっても、契約書を作成する上で考慮すべき重要なポイントとなったのです。
このような社会情勢の変化を踏まえて、契約書中の「本」という文言、あるいは「出版」などの文言に、電子書籍化も含まれると解するべきなのか、解さないべきなのかが問題となっています。これは特に、
という問題です。さらに、「出版権設定契約」においては、
古くからある「出版」の概念に「電子書籍化」を含めてよいのか
含めるならば、他の条文(著作権法81条、82条2項など)との間で整合性を保つことができるのか
などです。いずれにせよ、これらの問題は、当事者がどのような契約を結んだのか、あるいは、著作権法上の「出版」に「電子書籍化」が含まれるのか、という問題です。ご自身の契約に関して不明な点がある場合は弊社までお問合せください。
ここまでで「契約書なんて持ってない!」と慌てた方もいらっしゃるのではないでしょうか。まず、単に契約書を紛失したという方は、まずは出版社に問い合わせてください。契約は結んでいないという方は、その昔「基本契約書」を交わしていないか、探してみてください(付録A「Q and A」参照)。最後に、全て口約束だった、基本契約書も個々の書籍の契約書もないという方は、少し厄介です。この節では、この場合の対処方法について説明します。
著者が原稿を書いて、出版社がその原稿に基づいて出版をしているのですから、契約書がない場合でも、著者と出版社の間には何らかの契約が存在します。このことは容易に証明できるでしょう(ただし、「原稿を渡したらいつのまにか勝手に出版されていた。原稿料も貰えないし、まともに相手にしてさえもらえない」というひどい状況がごく稀に存在するようです。その場合は、弊社までご相談ください)。ただ、その契約が、権利譲渡型契約なのか出版依頼型契約なのか、出版依頼型契約なら、非独占型なのか、独占型(独占許諾型・出版権設定契約型)なのかについては、当事者が当時どのような契約を結ぼうとしていたのかを明らかにしない限りわかりません。
実際には、個々の契約の事情に応じて以下の要素などを考慮し、総合的に契約類型が判定されます。
aからdの個々の要素について、以下で説明します。
権利譲渡型契約にせよ、出版依頼型契約にせよ、通常何らかの対価が支払われます。この対価の支払い方法や金額から推察して、どのような契約を結んでいたかを判断します。出版契約類型が異なれば、出版社が得るものも異なってくるため、契約両当事者はその重要性に応じて対価を定めるはずです。この点に注目して、どのような契約だったかを判断するわけです。
一般に、印税方式なら出版依頼型契約、原稿料方式なら権利譲渡型契約だと言えるでしょう。また、原稿料方式で対価が特に高額であるならば、権利譲渡型の中でも、特に著作権の譲渡があっただろうという推定が強まるでしょう。また、契約期限切れの時期と思われる時期に出版社が「更新料」を払っているならば、印税方式すなわち出版依頼型契約だったと推定できるでしょう。
出版契約締結当時において、どの契約類型がそのような場合に一般に使われていたかをもとにして、そのときの両当事者の意思を推認します。
例えば、雑誌のコラムについて買取が「通常の契約方法」だったのなら、「著作権(の一部)の譲渡」契約を結ぼうとしていたと推認できます。一方、コラムは「独占許諾型の出版依頼型契約」とするのが「通常の契約方法」だったのなら、独占許諾型を前提とする契約を結ぼうとしていたと推認できます。
同様の理由で、その出版社が通常どのような契約を結んでいたのかも、契約類型の判断に意味を持ちます。例えば、その出版社が常に買取で契約していることを著者が知っていて契約したなら、その契約も権利譲渡型だったと推定されます。
契約両当事者の事後の行動から、どのような契約類型だったのかをさかのぼって判断することもできます。例えば、再版を知っていたのに著作権の主張、使用料の請求などを行わなかったという事実があれば、買取すなわち権利譲渡型契約だったという推認に繋がる場合もあります。また、そもそも再販等について取り決めがなされていなかったのであれば、権利譲渡型契約だったという推認に繋がる場合もあります。
その著作物の性質、表示等によっても、どのような契約だったのか推認が働きます。例えば、書籍の奥付の著作権表示は、著作権者が誰であるかを示す重要な項目です。その表示が著者になっておらず、契約の相手方やその関係者になっているのならば、権利譲渡型だったと推認できるでしょう。
出版社との契約期間が満了し、著者が持つ権利の全てが著者手元にある場合は著者ご自身の判断で電子書籍を作成することができます。ご参考までに、絶版堂では下記の方法で電子書籍化作業を行います。
絶版堂へのお問合せはこちら
ここまで、絶版書籍を電子書籍化するために確認すべき出版契約について解説してきました。ここまで見て頂いて、「絶版」でない場合には、著者が”全くの自由に”電子書籍化を実現できる状況があるわけではないことに気づかれたこと思います。この状況を放置するならば、著者は出版社が電子書籍化を行ってくれるまでひたすら待つとという選択肢しかありません。
ですが、「電子書籍」によって著者は、自らの判断で新たにアクションを起こす機会を持つことになったのです。
そこで、この節では、どのようにアクションを起こせばよいのかについて説明します。アクションには、次の2種類があります。
これは、今までの契約を上書きする新しい契約を結ぶ方法です。最も穏当ですが、その代わり、著者と出版社の力関係によっては、言いくるめられたり、引き延ばされたり、拒否されたりする可能性もあります。この方法をとる際のポイントについては、7節「[参考]出版契約更改時に見直しをお勧めする条項」をご覧ください。
実は、この方法は出版社からあなたに届いた(あるいは、この先届くかもしれない)「電子書籍化に関する覚書」と同じです。出版社はこの覚書によって既にある契約書を上書きする内容を組み込みます。この覚書を締結することにより、これまでは出版契約書一本によって定まっていた著者と出版社の関係が、出版契約書+覚書によって定まることになります。
参考までに覚書のサンプルをご紹介します。

なお、電子書籍化に関する覚書の申し入れは、それが著者側から行われるのであっても出版社側から行われるのであっても、相手方に対して強制力は持ちません。締結するか否かは、著者と出版社のそれぞれの判断に委ねられています。
解除方法は出版契約類型によって異なります。ここでは、独占許諾型の出版依頼型契約の場合と、出版権設定契約型の出版依頼型契約の場合について説明します(非独占型の出版依頼型契約はそもそも解除する必要はありません。また、権利譲渡型契約については、先に述べた「権利を取り戻す方法」によらなければなりません。)。
当該契約書に定める契約終了の手段をとることが考えられます。契約書ごとに異なる定めがありますが、特に「出版許諾契約の存続期間」や「契約終了の方法」といった条項をチェックします。例えば、次のような規定があるとします。

この契約書においては、「契約の有効期間」満了の3ヶ月前までに「文書をもって終了する旨の通告」を行えば、契約は終了します。また、契約書には、次のような規定も含まれているかもしれません。

もし相手方がこの出版契約に違反している事実があれば、この条文を用いて契約を解除することができます。しかし、相手の契約違反が前提ですので、通常はとり得ない手段でしょう。
出版社と出版権設定契約を結んでいる場合、品切れ重版未定状態は、出版社が継続して出版する義務(著作権法81条2号)を履行していない状態です。著作権法は、「文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もって文化の発展に寄与すること」(著作権法1条)を目的としています。一方、出版社が有する出版権は、かなり強い権利です。そこで、品切れ重版未定状態によって著作物が世に出ることが妨げられないように、継続して出版する義務を出版社に課しているのです。
著作権法は、出版社が継続して出版しない場合に備え、著者に対して次のような権利を与えています。
ただし、著作権法81条柱書但書は、これらの権利を契約で上書きすることを認めています。契約書による上書きは出版社・著者ごとに異なるため、ここでも、まずすべきことは契約書のチェックということになります。以下では、契約書の多様性をあえて無視し、著作権法の規定だけを見た場合の手続きを説明します。

契約関係の解除という手法は、本来であれば著者が当然行えることですが、これらを行使して出版社と交渉するというのは並大抵のことではありません。以前弊社が打ち合わせをしたある著者様は、「編集の方には大変お世話になったので、事を荒立てるのは気が引ける」と言われました。仰るとおりで、これが特に1冊目の本などであれば、なおさらです。一方で、ベテランの方になると、場慣れをされているからか、出版社との交渉を経て電子書籍化にこぎつけたという方もいらっしゃいます。
電子書籍が今後どのような形で日本に根付くかはまだわかりませんが、それは出版社次第ではなく、書籍端末によるのでもなく、著者の取り組み次第だと弊社は考えています。
本文を通じて、契約書の記載内容が非常に重要だということは深くご理解いただけたかと思います。この節では、電子書籍を作ろうとしている著者のリスクを少なくするという観点から、出版契約を更改する際に是非見直しを考えるとよい条項について説明します。
著者の著作物が、その出版社からしか(電子)出版できないのか、他社からでもできるのかを定める条項です。
電子書籍は新しい潮流であり、1社からしか出版できないとした場合、限らた端末や媒体でしか読者は読むことが出来ないというデメリットを負うことになってしまいます。また、独占許諾型の出版依頼型契約を締結した場合、(条件によりますが)その出版社が出版しない場合に、著作物が死蔵されてしまう危険があります(独占型の出版依頼型契約を結んだ上で、出版社が電子書籍化の潮流を見極めるまで電子書籍化しない、等。)。
例えばアメリカの例では、独占・非独占で印税率を変えるのが通常のようです。
以下に挙げる条項に関連するリスクも、非独占型の出版依頼型契約になっていれば低くなります。
日本のみで流通するのか、海外も含むのか、含むならどの地域とするか、また、契約はいつまでか、さらには、日本語のみか、英語やその他の言語を含むのかを定める条項です。自動更新に関する条項には、特に注意してください。
初回の期間満了後の取り扱いも重要です。現在、紙の本の出版契約には、「一方が継続を申し入れたときには〇年継続する」旨の強制契約更新条項が入っていることが多いため、出版に値する著作物の多くが出版社に死蔵されています(いわゆる「在庫なし出版元重版未定」や「品切れ重版未定」)。
出版するメディアを定める条項です。特に「現在存在し、将来開発される全てのメディア」という表現に注意してください。
電子出版にも関係する権利である公衆送信権等が認められるようになった平成9年頃から、「現在存在し、将来開発される全てのメディア」に対して契約を適用する旨の条項を入れることが多くなったようです。非独占型の出版依頼型契約にするか、あるいは許諾期間を見直すならば、大したリスクにはなりませんが、そうでなければ、この文言にも注意しておく必要があります。
これまでの「紙の本」においては、重版・改訂版刊行に際して、文言・内容の修正が行われてきました。しかし、電子書籍は刊行後の修正が容易なため、「重版・刊行に際しての訂正」ではなく、著者・出版社・読者が気づいたときに修正できるような契約文言にしておくことも重要でしょう。
対価を固定額とするか変動額(印税方式)とするか、変動額なら何の何%とするかを定める条項です。
電子書籍については、未だ確立した印税率は存在しません。著者の側でも十分に検討した上で契約することをお勧めします。
「毎年年末になると出版社からお金が振り込まれるけれど、結局どれだけ売れたのかが全然わからない」というようなボヤキの言葉が出ないように、
に関する条項を契約書に盛り込むことをお勧めします。
契約上の問題がクリアされて、いよいよ電子書籍化に着手することになったとしましょう。このとき、他者の著作権に注意しなければなりません。この節では、この問題について説明します。
著者が作るのは本の原稿(本の素材テキスト)であり、出版社等がそれを編集し、図版やイラスト、写真などを挿入し、それらをレイアウトした上で出版します。ここで、素材テキストとなる本の原稿は、著者自身の「著作物」(著作権法2条1項1号)ですから、自由に使用できます。しかし、図版・イラスト・写真等は、それぞれ作った人の「思想・感情を創作的に表現したものであって、文芸・学術・美術・音楽の範囲に属するもの」(著作権法2条1項1号「著作物」)である(あるいはその可能性が高い)と言えます。したがって、それらをそのまま用いることはできません。
編集やレイアウトについては、著作権の対象となる「著作物」(著作権法2条1項1号)と見なされる可能性は低いことから、そのまま用いることができると思われます。
以上を踏まえ、出版社に渡した原稿や、そのデータを持っている場合は、それを使用した電子書籍化は容易です(図版等を用いる場合には、図版等の著作権者の権利を侵害しない形でこれらを準備する必要があります)。なお、出版社から出た本をそのままスキャンしてデータを販売する手法は、著作権法違反となる可能性が高いと考えられます。

出版社と著者との間で、現在までに数多くの契約書が交わされてきました。しかしながら、その権利について今まで誰も本格的に考えてきませんでした。また、今の日本の電子書籍プラットフォームを見る限り、やはりメーカーや出版社同士の都合が「優先されている」ように見えます。しかし、今後、Apple、Amazon、Google、その他ソーシャルメディアやオンライン決済サービスといったまったく新しいプラットフォームが日本で一般的になることで、出版社を経由しなければ本を出せないという時代に変革がもたらされるはずです。
弊社、絶版堂は、『電子書籍を通じて、日本の知恵を世界に配信すること』、そして『知に関わる全ての人々を支援すること』を理念としています。著者一人一人が持っている叡智、知的興奮を、より多くの世代にわたり、より多くの読者が共有できるように事業を進めてまいります。
これらを思い、これからの著作活動のために絶版書籍を資産として再活用したいとお考えの著者様を絶版堂は応援します。1つでも多くの著書が、電子化によってまだ見ぬ読者に新たな価値を提供できるよう、精一杯支援させていただきます。
著作権法と出版契約はどちらが強い?
多くの場合、著作権法よりも出版契約が優先されます。仮に「権利譲渡型契約」だったとします。著作権法にはこの場合に関する特別な規定はありませんから、契約書のチェックこそが必要になります。「非独占型の出版依頼型契約」と「独占型の出版依頼型契約」についても同様です。例えば、法律で特に認められている類型である「出版権設定契約」だったとします。「出版権」に関する条文(著作権法79条から88条)は意外と著者寄りに作られていますが、契約自由の原則のもと、著作権法上の条文よりも著者と出版社の間の契約が優先される場合が多いと思われます。したがって、出版権設定契約においても、契約書をチェックする必要があります。
■「基本契約書」とは?
出版社との付き合いが始まったときに交わす、「出版基本契約書」あるいは「出版契約書」といったタイトル(名前)の包括的な条項を定めた契約書です。個別の出版物については「別途定める覚書による」などと書かれているかもしれません。出版契約類型のような重要な事項は、高い確率でこれらの基本契約書に盛り込まれています。
■出版社から著作権を買い戻そうとしたら「ここにはない」と言われた!
出版社に譲渡した著作権等の権利は、現在もその出版社に所有されているとは限りません。その出版社の代表者、関連企業、債権者等に権利が移っている可能性があります。また、その譲受人がさらに他の人に譲り渡している可能性もあります。権利の買い戻しは「買い戻すときに権利を有している者」からでなければ不可能です。また逆に、出版社が「弊社が権利者である」と言ったとしても、それを証明する方法はないことにも注意してください(著作権の登録がしてある場合、および出版契約に譲渡禁止特約を含めている場合は、この限りではありません)。
■出版依頼型契約のつもりだったのに、実は権利譲渡型だった!
契約書をよく見ていないと起こりうることです。この場合、契約締結についての詐欺(民法96条)・脅迫(民法96条)・錯誤(95条)を主張して契約を取り消し、もしくは契約が無効であるとした上で、過去の法律関係について清算し、取り消し・無効主張時以降の法律関係を解消することが、論理的には考えられます。一定の条件下ではこの手段が有効でしょう。ただし、その場合でも「著作権者は弱者、出版社は強者」として扱われるわけではないので、積極的にこれらの事項を主張・立証していく必要があります。
しかし、著作権が登録された上で第三者に譲渡され、第三者が権利者として登録されている場合には、著作権を取り戻せない可能性が高いでしょう(著作権法上は、「登録」(著作権法75条以下)が「対抗要件」とされています)。
■著作権法の継続出版の義務を使って出版社に電子出版を求めては?
著作権法81条2号の「当該著作物を慣行に従い継続して出版する義務」を根拠にその出版社に電子出版を請求するという方法考えられます。この場合出版社が「著作権法は電子出版に対応していないから何とも言えない」と言った場合、それは、「出版権設定契約には電子書籍が含まれていないことを認めている」ことになりますので、著者自身・当社を通じての電子書籍化が可能だと思われます(念のために一筆を取るか、録音をしておく程度の慎重さは必要となります。)。もっとも、「慣行上、まだ電子書籍化する必要がない」などと言われた場合電子書籍化を強行することまではお勧めできません。
■契約条件は出版社にお任せなのですが…
今まで数多くの著者様からお話をうかがいましたが、そういう方は少なくありません。しかし、今後は著者も主体性を持って話し合うことが必要になるでしょう。電子書籍というと、よく印税率が話題になりますが、出版社と交わす契約にはそのような大切な内容がたくさん含まれているのです。
実際、ある著者は自ら出版社に交渉することで、電子書籍の非独占型契約を獲得しました。これによって、著者が主体的にメディアを選び、マルチプラットフォームで電子書籍を出すことができます。また、価格交渉もそれぞれについて可能になります。別の著者は、海外出版の権利を出版社に渡さないように交渉して、Kindleでの翻訳出版を計画しています。
著作権に関して、出版業界は音楽業界や映画業界に比べて慣習的に「大らか」な面が多々ありました。今後電子書籍が本格化するに従い、紙の出版と電子の出版の特性を著者自身がより深く理解し、自らの権利を意識することは、今後の創作活動にきっと良い影響を与えることになるでしょう。
著作権法では「出版」という用語に電子書籍が含まれるかは定義されていません。新しい技術である電子書籍についても同様に明確な定義はありません。そこで、弊社では通常次のようなプロセスをとると考えています。
ここで必要となる権利(=著者から許諾を受ける権利)の中核は、「複製権」(著作権法21条)および「公衆送信(自動公衆送信の場合にあっては、送信可能化を含む)」権(著作権法23条1項、同2条9項の4、同2条9項の5)です。
なお、出版とは、複製権者が「複製」を作った上で複製物を「譲渡」するものであり、「複製」と「譲渡」をきっちり区別して考えることが重要であることを付け加えておきます。「複製+譲渡」か「複製+公衆送信」かという点で、「出版」と「電子書籍化」は区別されます。
以下の付録Cは、「契約書の文言で「譲渡」とあったら多分譲渡型というけど、何故そんなことが言えるの?「多分」ってどういうこと?」そういう疑問を持たれた著者のための解説部分です。
出版「契約」とは、著者の著作物を出版社を通じて出版・頒布してもらうための契約です。つまり、例えば家を買う契約と同じく、また、ハウジングメーカーや工務店に家を建ててもらうのと同じく、契約の両当事者がその契約に拘束されます。したがって、著者が原稿を書かなければ契約違反ですし、出版社が出版しなければ契約違反です。
契約の細部はともかくとして、出版とは著者が書いた原稿を出版社が出版することなのですから、著者が原稿を書いて出版社に渡すことと、出版社が出版することは、出版契約の本質的要素となります。このような契約に関して、契約書は両当事者の合意を記した唯一の書類であり、契約の内容を確認するための重要な証拠です。また、昔に遡って当事者の意思を確認することが不可能であるために契約書を交わすのだとも言えます。
このような契約書の意義を考慮すると、まずは「契約書の表現に着目して判断すべき」であって、「契約書の表現からは判断しにくいけれども、実際には当事者は〇〇と考えていたのだ!」というような解釈はすべきではありません。
ここで、出版から離れて、「明日から住む家を確保する方法」に置き換えて考えてみましょう。例えば、@家を買う、という手段が考えられます。いわゆる「一生に一度の買い物」の契約です。そのほかには、A家や部屋を借りる、という方法が考えられます。これは最低数万円で済む契約です。このようなたとえを使うと、同じ「明日から住む家」であっても、@買う場合とA借りる場合とでは、契約に際しての心構えが大きく違ってくる(べきである)ことが理解できます。
出版契約にも、@権利譲渡型と、A出版依頼型(非独占型、独占許諾型、出版権設定契約型)があります。@権利譲渡型は、家を買うのと同じ重大な契約なのです(Aが軽いといっているわけではありません、念のため)。一方でそれよりも軽い契約類型もとりうるのですから、通常は権利譲渡型契約は結ばないでしょうし、結ぶとしても相応の対価が約束されて初めて検討するでしょう。
このように、契約当事者の意思に遡って契約書を読み解くならば、出版契約が結ばれた場合、その契約は通常、出版許諾契約であると解するのが合理的です。反対に、対価が使用許諾料よりも非常に高額である等の事情があれば、明確に「譲渡」と言わなくとも、著作権等の譲渡があったと解するのが合理的です。
このように、契約の解釈には
という2つの方法があります。そこで、どの類型の出版契約だったかを判断した数々の判例も以下の2つの方法から理解することも可能です。
判例の動向としては、基本的にa(契約書文言重視)です。もちろん、契約書が存在しない場合にはbの手段によることになります。
ところで、「明日から住む家を確保する方法」という例を使いましたが、実は、著作権と家には大きな違いがあります。(誤解を恐れずに言うと)それは、著作権は情報に対して発生するものであって際限のないコピーが可能だという点です。この点が著作権侵害として争われる大きな原因となっていることについては、ここでは関連がないので言及しません。
ここで、多くの方が誤解されている著作物の「所有権と著作権」の関係について、軽く説明します。
まず結論から言ってしまうと、「著作物に対する著作権」と「原稿等の所有権」は異なるということです。
例えば当社が、「絶版書籍をリバイバル出版しよう」というタイトルの本を出版したとしても、その本を購入した人はその本を自由に使えますよね?線を引いたり、コメントを書き足したり、著者としては残念なことですが、捨てられたり・・・。
「絶版書籍をリバイバル出版しよう」というタイトルを有する、その著作物が印刷された紙の集合体である「本」についての所有権は本を買った人にありますから、著者である当社としては本に加工しようが捨てようが、口を出せません(もちろん、捨てたり古本屋に売ったりするのには口を出したいでしょうが・・・。)。

でも、その本についての著作権、つまり、本の内容をなすデータに対する著者の権利、は著者にありますから、著作権を侵害するような態様の利用方法には、口を出せます。「契約の範囲を超えた出版をしないでくれ」、「私の本を(著作権法が定める方法を超えて)コピーしないでくれ!」、「勝手にネットにアップロードしないでくれ!」etc

この例と同じように、著者が著作権を有している著作物の出版をある出版社に許諾したとしても、あるいは、著作権を譲渡してしまっていたとしても、「原稿の所有権は出版社に移転する」というような契約書がない限り、著者が書いた原稿の所有権は著者にあります。
伝聞でしかないのですが、会社の仕事時間に会社の命令で書いた内容をそのまま自作の本として出版する人がいると聞いたことがあります。こういった場合、その内容を考え、文章を考え、校正し、「書いた」のはその人かもしれませんが、一定の場合、「職務著作物」として扱われ、会社に著作権が発生することがあります。今回はあまり本論と関係しませんので、「職務著作物」については、この程度の紹介に止めておきます。
免責条項:以上の見解は法律・契約・通説等を踏まえた当社の見解であり、その見解の正誤等について、当社は何らの責めも負いません。